今年の9月、こんなニュースがありました。
津波心配だから…熱海市、沿岸のマラソン大会中止 (朝日新聞)2012年9月13日16時21分
http://www.asahi.com/national/update2/0913/TKY201209130338.html
静岡県熱海市が毎年3月に開いている「熱海湯らっくすマラソン」(市など主催)を、来年は中止することが13日、市への取材で分かった。相模湾の海岸沿いを走るため、心配される「神奈川県西部地震」などが起きれば津波から参加者を守れないと判断したという。
同マラソンは1985年に始まった。海岸沿いの「熱海ビーチライン」(標高約7メートル)を主に走り、2キロから12キロまで四つの部に今年は約3200人が参加した。
このうち、約2千人が参加し、約6キロを折り返す12キロの部は、コース内に高台への避難路は3カ所しかなく、それぞれ1.2~1.9キロの間隔で離れている。市は今年の大会に職員を配置し、万が一の時には参加者を誘導する態勢を取ったが、大会後、市職員から「安全確保が難しい」との声が上がり、中止を決めたという。
斉藤栄市長は「地震がいつ起きるか分からないからこそ、中止を決めた。安全確保は物理的に難しいと判断した」。市観光課は「今後コースが変更できないか検討したい」としている。
コース周辺の海岸は毎夏、海水浴や花火大会の観光客らでにぎわう。市は海岸から高台への避難路は整備され、避難路の案内板もあり、安全性は確保されているとしている。
神奈川県の被害想定によると、「神奈川県西部地震」はマグニチュード7クラスの地震で、夏の正午に起きた場合、同県内の死者は2610人に上る。津波による死者が9割以上を占めるとされている。
その後、テレビでも取り上げられ、私も何故か取材を受けて、この問題についての疑問点を調べいくつか解決しましたので、整理します。
【疑問点とその答え】
Q.海沿いのコースで、津波の危険性を指摘される大会は、数多くあるのに、なぜ熱海だけ中止になるのか?
⇒ 他の大会では、陸側に避難路が整備されているが、熱海の場合、コース上、陸側が崖となっていて、避難路が十分に備わっておらず、津波の予想到達時間に避難できる体制が整っていない。
Q.津波の被害想定は、あくまでも予測ではないのか?
⇒ 過去には、熱海に10m以上の津波が押し寄せたこともあり、大地震の際には、津波が来る可能性が高い。
Q.人が逃げられない道路ということは、「熱海ビーチライン」が渋滞の際に、地震が起きたら、車でも危険ではないのか?
⇒ 確かに危険ではある。 しかし、現在、「熱海ビーチライン」は民間会社が管理・運営しており、マラソン大会以外の日は、市が直接的な責任者とはならない。(民間会社の責任となると思われる。)
Q.避難路を作らないのか。
⇒ 将来的には、作らなければならないが、道路の管理・運営会社との協議が必要ですぐには作れない。
Q.そもそも、避難路のない海沿いのコースでなぜ行われていたのか。
⇒ 熱海市は、山沿いの地形で、平坦なコースを作る場合、国道は交通量が多く通行止めにするのが厳しく、熱海ビーチラインの場合は、開催時期の3月は、比較的、交通量が少なく、市民生活に影響が出ないため、最適であったため。
また、スタート地点を海沿いに持ってくることで、結果的に、新幹線や鉄道利用者も、自動車利用者も、会場までに駅前の商店街を通過することになり、そこで飲食・お土産を買う人が増えて、経済効果が高まったといえる。
Q.本当の中止の要因は、財政難ではないのか。
⇒ 過去には、何度か財政難で中止にしようとしていたのは事実。しかし、ここ数年は、マラソンブームで参加者が増えると共に、運営組織も、NPOに移管して、市の支出も、年間250万円から50万円となり、財政難で中止ということではない。
Q.コースを変えて行えばよいのではないか。
⇒ 最終的には、コースを変更して行う予定で準備を進めている。ただし、現状のコースが熱海市内で行う場合、経済効果、渋滞の少なさという面でベストなコースだったと思われるので、新コースは、メリット・デメリットを考えると多少厳しくなる。
また、同じコースでの開催は財政負担が少なくて済むが、新コースで開催する1年目は、交通規制、警備、誘導、広告、迂回路の設定など、綿密な計画を立て直す必要があるため、市の支出も市職員の作業量も増えることになる。
以上のように問題点を整理すると、今回の熱海湯らっくすマラソンの中止の判断は、妥当であったと思われます。
しかし、唯一、腑に落ちなかったのが、何故、中止の決定を市からの発表でなく、新聞報道が先になってしまったのか、ということです。ちゃんと説明すれば良かったのですが、逆に、不信感を募らせてしまって、熱海は危ないという逆宣伝になってしまっています。
マラソン大会を開催することは大変で、どこの大会も、本当にマラソン好きの担当者によって、ようやく開催にこぎつけています。(走る首長がいる大会はよい大会が多いです。)
今後は、来年は中止が決定していますが、再来年以降は、市、議会、観光協会が一体となって、議論して、新たなコースでの大会を模索していくようですので、動向を見守りたいと思います。
2012年11月11日放送 噂の!東京マガジン 噂の現場
熱海の温泉街に衝撃走る!マラソン大会中止の余波
http://www.tbs.co.jp/uwasa/genba/20121111.html
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【参考資料】
平成19年11月
行財政改革プランの策定 http://www.city.atami.shizuoka.jp/page.php?p_id=844
熱海市行財政改革プラン(平成19年度~平成23年度) 平成19年11月
http://www.city.atami.shizuoka.jp/www/contents/1188262000174/activesqr/common/other/473108ae002.pdf
52ページ
湯らっくすマラソン開催事業 廃止を決定
(理由:参加者数の減少や観光振興の一環として実施するにはあまり効果が見られない。また、スポーツ振興の観点では、陸上競技人口の拡大を図るため陸上競技教室の開催や市民駅伝の実施など他施策により実績を上げていることから、本事業を平成21年度より廃止します。ただし、廃止までの間に参加者数の増加施策やスポンサーの獲得など改善された場合には、再考することとします。)
優先順位別事業一覧(第4位)
http://www.city.atami.shizuoka.jp/www/contents/1188262000174/activesqr/common/other/473108ae006.pdf
湯らっくすマラソン開催事業 平成20年度
予算:総額8,537千円 一般財源 2,487千円 参加料収入等 6,050千円
熱海市行財政改革プラン
<平成20年度ローリング版>
平成20年10月
⇒これまで市主体により実施してきたが、「熱海市体育協会」のNPO法人格の取得により同法人との共催事業に変更する。このことにより、財政面においても改善したことから当初プランを変更し、継続実施していきます。
(一般財源は499千円)
http://www.city.atami.shizuoka.jp/www/contents/1216770856072/activesqr/common/other/48eace1b002.pdf
51ページ
熱海湯らっくすマラソン エントリー数
http://venus.sportsentry.ne.jp/event.php?tid=20084
2006年度(平成18年度)2007年3月 【合計:2151人】
2008年度(平成20年度)2009年3月 【合計:3368人】
2009年度(平成21年度)2010年3月 【合計:4407人】
平成23年版 熱海市の観光(562KB)(PDF文書)
http://www.city.atami.shizuoka.jp/page.php?p_id=495
年間観光客数は、減少しているが五百万人
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