2013年5月1日水曜日

世界陸上女子マラソンの選出が3名だけの理由

今年8月にモスクワで行われる陸上の世界選手権のマラソン代表は、男子は選考会で2時間8分台を出した5人が順当に選ばれましたが、女子は代表枠5人を使わずに3人だけの選出になりました。

実際、世界陸上の女子マラソンの参加標準記録は2時間43分なので、日本でこのタイム以内で走れるランナーは5人以上います。

しかし、日本陸連は、以下のような選考基準を設定しました。
http://www.jaaf.or.jp/wp/wp-content/uploads/2013/01/outline-wch.pdf

1) 横浜国際女子マラソン、大阪国際女子マラソン、名古屋ウィメンズマラソンで、
   2時間23分59秒以内で日本人1位になった選手(代表内定)

⇒ 木崎良子(ダイハツ) 2時間23分34秒 (名古屋優勝) 選出

2) 横浜国際女子マラソン、大阪国際女子マラソン、名古屋ウィメンズマラソン
  及び 海外のマラソン ベルリンマラソン、シカゴマラソン、ニューヨークシティマラソン(中止)、ボストンマラソン、ロンドンマラソンで2時間23分59秒以内を記録した選手 (代表候補)

⇒ 該当者なし

3) 横浜国際女子マラソン、大阪国際女子マラソン、名古屋ウィメンズマラソン、北海道マラソンで日本人3位以内から選考する。

⇒ 野口みずき(シスメックス)2時間24分05秒  (名古屋日本人2位) 選出
      福士加代子(ワコール)  2時間24分21秒 (大阪日本人1位)  選出

  赤羽有紀子 (ホクレン) 2時間24分43秒 (ロンドン3位:日本人1位) 選考基準対象外

      渡邊裕子 (エディオン)  2時間25分56秒 (大阪日本人2位) 
       早川英里(TOTO)    2時間26分17秒 (名古屋日本人3位)
   小﨑まり (ノーリツ)       2時間26分41秒 (大阪日本人3位)
      那須川瑞穂 (ユニバーサル) 2時間26分42秒 (横浜日本人1位)
   伊藤 舞 (大塚製薬)   2時間27分06秒 (横浜日本人2位)
   藤田真弓 (十八銀行)   2時間29分02秒 (横浜日本人3位)
   吉住友里(大阪長居AC) 2時間39分07秒  (北海道日本人1位)
     岡本美鈴(北國銀行)     2時間45分46秒 (北海道日本人2位)  参加標準記録に満たず
       鈴木澄子(ホクレン)    2時間47分32秒 (北海道日本人3位) (名古屋で2時間38分台)


以上の選考基準から、木崎選手が内定、その他の選手は、3)のカテゴリから選考することになります。

野口選手、福士選手はタイムも順位も良いので、順当に選出されました。

そして、4人目以降をどうするかということになります。


しかし、横浜国際女子マラソンで日本人4位(2時間31分43秒)、そして、五輪の金メダリストなど実力者が出場したロンドンマラソンで、2時間24分43秒を出して3位に入って健闘した赤羽有紀子 (ホクレン)選手は、1)~3)の基準のいずれにも当てはまらず、選考対象外になります。



この選考会で4番目に評価されるべき(あるいは2番目に評価されてもよい)赤羽選手ですが、上記の選考対象基準が該当しないので、選ぶことができません。

その次は、強風の中、記録は伸びなかったが日本人1位の那須川選手か、大阪日本人2位の渡邊選手となりますが、赤羽選手とレース内容を比較すると(下記参照)、35キロ以降のペースの落ち込みなどタイム差以上に大きな差があることは否めません。

これで、赤羽選手を選ばず、那須川選手、渡邊選手を選出すると、不公平感が生じると共に、海外レースで戦うよりも、国内で消極的でも日本人1位を狙う方が得にになってしまい、選手の海外挑戦を阻むことにもつながってきてしまいます。

今回の選考基準で、対象レースに海外大会を含めたのも、世界で戦える選手を選ぶという位置づけであったので、那須川選手、渡邊選手は、今回の選考基準では選べないということになります。

個人的には、 若い渡邊選手に経験を積む機会を与えても良かったかもと思いましたが、今回はきっちりと線引きをした格好となりました。

マラソンは、他の種目と違って、当日の調子やレース展開で本命がなかなか勝てず番狂わせが起きやすい種目なので、3名より5名の方が、入賞はしやすくなると思いますが、

今回の3名のみの選出というのは、この選考基準で決めた以上、妥当だと思います。ただし、もう少し海外レースに対する選考基準を記録だけでなく、順位など候補にするなど決めるべきだったと思います。
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本番は、木崎、野口、福士の3名で臨むことになります。
ここ最近の女子のオリンピック、世界陸上のレース展開は、前半は超スローペース、中間点付近から一気にハイペースでアフリカ勢がスパートするというレースが続いています。

木崎選手は終盤が強いので、できる限り集団で勝負することになると思いますが、
野口選手、福士選手には、前半から2人で協力して、マイペースで16分台で飛ばして大逃げを図るしか、勝機はないような気がします。 途中で集団に吸収される可能性が高いですが、そのようなレースを見てみたいです。

世界陸上 モスクワ大会 女子マラソン 2013年8月10日 現地時間14時スタート
http://www.tbs.co.jp/seriku/

フルマラソン女子世界ランキング(2012.8~2013.4)
http://marathon-world.blogspot.jp/2013/05/2012820134.html


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選考会でのペース比較

名古屋1位

木崎 良子 (ダイハツ) 2:23:34 (3:24.1/km)

 0- 5km 17:03 (3:24.6/km) 
 5-10km 16:53 (3:22.6/km) 
10-15km 16:53 (3:22.6/km) 
15-20km 17:01 (3:24.2/km) 
20-25km 17:00 (3:24.0/km) 
25-30km 17:08 (3:25.6/km) 
30-35km 17:09 (3:25.8/km) 
35-40km 17:16 (3:27.2/km) 
40-Goal 07:11 (3:16.4/km)
   
前半 1:11:32 (3:23.4/km) 
後半 1:12:02 (3:24.9/km) 


名古屋3位

 野口みずき (シスメックス) 2:24:05 (3:24.9/km)

 0- 5km 17:03 (3:24.6/km) 
 5-10km 16:53 (3:22.6/km) 
10-15km 16:53 (3:22.6/km) 
15-20km 17:00 (3:24.0/km) 
20-25km 17:00 (3:24.0/km) 
25-30km 17:08 (3:25.6/km) 
30-35km 17:11 (3:26.2/km) 
35-40km 17:23 (3:28.6/km) 
40-Goal 07:34 (3:26.8/km) 
   
前半 1:11:32 (3:23.4/km) 
後半 1:12:33 (3:26.3/km)


大阪2位

 福士 加代子 (ワコール)2:24:21 (3:25.3/km)

 0- 5km 17:09 (3:25.8/km)
 5-10km 16:51 (3:22.2/km)
10-15km 16:51 (3:22.2/km)
15-20km 16:56 (3:23.2/km)
20-25km 17:08 (3:25.6/km)
25-30km 16:50 (3:22.0/km)
30-35km 16:59 (3:23.8/km)
35-40km 17:41 (3:32.2/km)
40-Goal  07:56 (3:36.9/km)

前半 1:11:36 (3:23.6/km)
後半 1:12:45 (3:26.9/km)


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 ロンドン3位

赤羽有紀子 (ホクレン)  2:24:43 (3:25.8/km) 

  0- 5km 16:44 (3:20.8/km)
  5-10km 17:29 (3:29.8/km)
 10-15km 17:03 (3:24.6/km)
 15-20km 16:57 (3:23.4/km)
 20-25km 16:47 (3:21.4/km)
 25-30km 17:08 (3:25.6/km)
 30-35km 17:36 (3:31.2/km)
 35-40km 17:28 (3:29.6/km)
 40-Goal 07:31 (3:25.5/km)
 
前半 1:11:52  (3:24.4/km)
後半 1:12:51  (3:27.2/km)

大阪3位

渡邊 裕子  (エディオン)2:25:56 (3:27.5/km)

 0- 5km 17:09 (3:25.8/km)
 5-10km 16:51 (3:22.2/km)
10-15km 16:55 (3:23.0/km)
15-20km 17:00 (3:24.0/km)
20-25km 17:01 (3:24.2/km)
25-30km 17:21 (3:28.2/km)
30-35km 17:52 (3:34.4/km)
35-40km 18:11 (3:38.2/km)
40-Goal  07:36 (3:27.7/km)

前半 1:11:40 (3:23.8/km)
後半 1:14:16 (3:31.2/km)


横浜2位 

那須川 瑞穂 (ユニバーサルエンターテインメント)  2:26:42 (3:28.6/km)

  0- 5km 16:56 (3:23/km)
  5-10km 17:01 (3:24/km)
 10-15km 17:04 (3:25/km)
 15-20km 17:07 (3:25/km)
 20-25km 17:22 (3:28/km)
 25-30km 17:34 (3:31/km)
 30-35km 17:41 (3:32/km)
 35-40km 18:03 (3:37/km)
 40-Goal 07:54 (3:36/km)

前半 1:11:56 (3:24.6/km)
後半 1:14:46 (3:32.6/km)

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マラソンの記録

【フルマラソン】

◆男子世界記録 2時間00分35秒 ケルビン・キプタム(ケニア) 2023年10月 シカゴマラソン (2分51秒5/km)

◆男子日本記録 2時間04分56秒 鈴木 健吾 2021年2月 びわ湖毎日マラソン(2分57秒7/km)

◆女子世界記録 2時間09分56秒 ルース・チェプンゲティッチ (ケニア) 2024年10月 シカゴマラソン (3分05秒/km)

◆女子日本記録 2時間18分59秒 前田穂南 2024年1月 大阪国際女子マラソン (3分18秒/km)

◆自己記録  3時間37分32秒 2013年12月 青島太平洋マラソン(5分09秒/km)


【100km】

◆男子世界記録 6時間05分35秒 Aleksandr SOROKIN (リトアニア)  2023年5月 Vilnius (LTU) (3分39秒/km)

◆女子世界記録 6時間33分11秒 安部 友恵 (日本) 2000年6月 サロマ湖100kmウルトラマラソン (3分56秒/km)

◆自己記録 12時間13分41秒  2009年6月 サロマ湖100kmウルトラマラソン(7分20秒/km)

記録

【ハーフマラソン】
◆男子世界記録
 57分30秒 Y.ケジェルチャ(エチオピア) 2024年10月(スペイン・バレンシア)(2分44秒/km)
◆男子日本記録 1時間00分00秒 小椋 裕介 2020年2月(香川丸亀国際ハーフ)(2分50秒6/km)
◆女子世界記録 1時間02分52秒 レテセンベト・ギデイ(エチオピア)2021年10月スペイン・バレンシアハーフマラソン (2:58.8/km)
◆女子日本記録 1時間06分38秒 新谷仁美 2020年1月 米国・ヒューストンハーフマラソン (3:09.5/km)
◆自己記録  1時間37分12秒 2013年11月 江東シーサイドマラソン(4分36秒/km)